fiorentinax's ブログ

自宅で作った料理や、見た映画の感想、旅行の思い出を記録に残そうと始めたブログ

陸軍中野学校

陸軍中野学校

市川雷蔵のスパイもの。日本に初めて出来たスパイ養成学校の話。知人から面白いと聞いていてずっと
見たいと思っていた。そしてついに出町座の市川雷蔵特集の時に見たのだが、このシリーズの第一段、映画館で見れて良かった。

フィクションかと思ったがこの学校は実際に存在していたらしい。大日本帝国陸軍軍学校だからお国の命令には逆らえない、という前提のもとでの話だ。

当然、中野学校のルールから外れたものは責任をとらなければならず、女のことで規則を破った生徒が同期の仲間全員に「ここですぐに腹を切れよ!」と言われて本当に切腹してしまうシーンや、雷蔵が自分がスパイの学校にいるということを知ってしまいそうになった婚約者の小川真由美をわりと簡単に殺してしまうシーンには驚いた。お国のために、という忠誠心は同じでも「君を忘れない」で見たような特攻隊の雰囲気ではなく、スパイなだけにこの学校の生徒は熱血的ではなくどこか冷静だった。軍服ではなくスーツを着ているからそう見えるのだけで多分心のうちは一緒なんだどろうが。

このあとシリーズを全部見たが一番これが衝撃的だった。スパイといえば「007」ジェームス・ボンドがすぐに思い浮かぶが、ああいった軽快さやちょっとしたユーモアや色気はなく、常に真面目な任務で失敗したら死にます、という視点(大日本帝国陸軍だから007とは比較することがそもそもおかしいのだが)が驚いたと同時に映画の題材として新鮮に感じた。

雷蔵は当然クールでカッコいいのだが、教官役の加東大介だけがちょっと人間臭くて面白かった。加東大介はどんな作品でも可愛さがあってほほ笑ましい。

雷蔵小川真由美のシーンが妙にねっとりしていてなんでなのかな、と思ったら監督は増村保三だった。
やっぱりな、婚約者との別れのシーンも殺害のシーンの台詞とか雰囲気も増村監督と聞けば納得だった。