fiorentinax's ブログ

自宅で作った料理や、見た映画の感想、旅行の思い出を記録に残そうと始めたブログ

パターソン

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ジム・ジャームッシュ、2016年作品。久しぶりに心酔した。
パターソンという町のバスの運転手、パターソンが日々の出来事をノートの書いているだけの単純な話。
役者、脚本、音楽、美術、すべてにおいてセンスが抜群に良い。昔「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を見て衝撃を受け、この監督が好きだ!と
強烈に思ったその感覚を思い出した。
いろいろな人種を登場させ、その人たちをうまく融合させる。関係性は熱すぎもせず、薄すぎもせず、でも心地いい暖かさが人と人との間にあり、
それが日常化している。「こんな街に住みたいなぁ」と、思わせるような場所を作るのが上手いし、今回それが一番良い形で仕上がっていた気がする。
ジャームッシュのベスト3に入る作品、もしかしてベスト1かもしれない。

レンガつくりの町をパターソンが歩いている。そのショットがかっこよく、きれいで、で心をつかまれたが、家のモノトーンのインテリア、バーの雰囲気、ブルドッグ、優しい妻、どれを取っても雰囲気がものすごくよいし、やりすぎ感がないところがまたいい。
バスの乗客の何気ない話も面白いし、一番素晴らしいのパターソンの書く詩だ。単純な単語を並べているだけなのだが、一節一節が心に響いてくる。
詩のことは全然わからないけれど、美しい詩だと思う。

ラストに我らが長瀬正敏さんがすごくいい役で出演している。詩を書き溜めたノートを犬に粉々に噛みちぎられて、意気消沈で散歩にでたパターソンに
偶然出会った詩が好きで町を訪れたという日本人が新しいノートを渡す。この日本人が彼だが、このくだりが洒落ていて、ものすごく強い印象を残す。
新しい詩はこれからも新しいノートに書いて生まれる、というような前向きな感じ。ジャームッシュ監督の余韻の残し方はいつもさりげなく、主張がきつくない。そういうところもたまらなく好きだ。妻の描写もこの上なく素敵だった。こんな奥さんがいたら、なるほど秘密の詩も贈りたくなるだろう。