晩春 デジタル修復版
1949年度の「キネマ旬報ベスト・テン」の日本映画部門で1位に輝いている。というだけあって、小津監督作品の中でも力作だと思う。20代の頃に一度見たきりでほぼ忘れていたのだが、なんと美しくも悲しい話。忘れていたというより、当時から親不孝な私にはピンとこない話だったのかもしれない。改めて娘時代の父に対する自分の態度が悔やまれる。
早くに妻を亡くした大学教授周吉が笠智衆、
その父の世話をやいて婚期を逃している娘紀子に原節子。自分が心配で結婚を決めかねている娘に、後妻をもらうとウソをついて嫁にいかす父親。「私はお父さんと一緒にいるのが幸せなんです」という紀子。こんな父娘の関係もあるんだなぁ。今なら親の気持ちも、娘の気持ちも理解できる。紀子が嫁いだ後、一人ぼっちの家で涙する周吉がなんともやるせない。
紀子の親友役の月丘夢路が、とても気の強いしっかりした女性で、紀子にどんどんきつい言葉を浴びせて嫁にいかそうとするのだが、私には幸か不幸か、こんな親友はいない。
原節子が今まで見た映画の中で1番美しく思えた。キラキラ輝いている、とはまさにこの時の彼女をあらわすフレーズだ。