fiorentinax's ブログ

自宅で作った料理や、見た映画の感想、旅行の思い出を記録に残そうと始めたブログ

飢餓海峡

 

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内田吐夢監督。水上勉の小説が原作で、3時間3分の大作。

始まってすぐに画面に引き込まれた。

昭和22年、仮出所中の男二人が北海道で強盗殺人の後大金を奪いその家に火を放ち逃げる、その後三國連太郎さんが演じる犬飼と出会い、3人で逃げるのだが、その日に台風が北海道に上陸して…というくだり。

犬飼のギラギラした目をした必死な感じのものすごい野生感。なんだか面食らった。

3人で逃亡したはずが犬飼だけになって、後の2人は死体となって現れるあたりから、どうやって犬飼が逃げ切れるのか?ということに焦点が絞られてくる。

この事件の担当刑事が伴淳三郎さん。途中から高倉健さんが出てくるのだが、健さんのなんと男っぷりの良いことか!最初画面に現れた時はスーツ姿にドキッとした。

 

すっかり町の名士になった犬飼に2人が対面し、詰問していくのだが、またその時の犬飼のしらばっくれようが良い。観客も、もしかして人違いか?と思うかもしれない。

 

話に並行して出てくるのが、犬飼が事件を起こした次の日に会う娼婦の八重。八重の貧乏な実家の身の上話に同情して仲間から強奪した金の一部を八重に渡す犬飼。八重はこの時切ってやった犬飼の黒い爪を肌身離さず、上京してからもずっと持ち続ける。この爪の伏線のはり方が見事だった。そして左幸子さんのズーズー弁と演技の素晴らしさ!「日本昆虫記」の時も感動したが、左さんは本当にこういう役が上手い。

犬飼が八重と知り合うシーンから、犬飼に手をかけられるまでのシーンは迫真の演技と言える。居酒屋での八重も実際に存在したかのような女に思えた。

 

ラストに犬飼が、手錠かけられたまま船上から海へ飛び込む。最後まで自分を想ってくれた八重のもとへ行こうとしたのか、あれだけのことをしてのし上がった自分ならどうにか助かるかもしれない、と思いとび込んだのか、それはわからない。見終わってしばらく考えてしまった。

 

監督と役者の魂のこもった名作だ。見れて良かった。