秋刀魚の味
20年ぶりくらいに再見。改めて見ると、すごい豪華キャスト!
笠智衆の娘に岩下志麻、その兄が佐田啓二、嫁が岡田真理子、学校時代の恩師が東野英二郎で、その娘が杉村春子。他に中村伸朗、三宅邦子、岸田今日子、加東大介、須賀不二雄など。二シーンほどしか出てこないこの脇役の人たちが非常にいい演技をして、笠智衆を盛り立てている。
23歳になる娘を亡き妻のあと便利使いして、婚期を逃させてはいけないと、父親が奔走するのだが、そのきっかけとなるのが、自分と似たような境遇でずっと娘を手元に置いた結果いかず後家になってしまう不幸な父娘を見てしまったから。この父娘が、東野英二郎と杉村春子が演じているが、もう哀愁と生活感がありすぎて、なんだか悲しくなってしまった。
いい歳になるまで、鱧を食べたことがない、という東野のエピソードがいい。その事実と食べかた、酒の飲みかただけで彼のこれまでの人生がどんなものだったか、よく分かる。
どうにか娘を嫁にやったあとに、岸田今日子がママのバーで笠智衆が寂しく一人でウイスキーを飲んで、ちょっと情けなさそうな、泣きたいような顔をする。それがなんとも言えず可哀想で、よく出来た映画だなぁ、と小津監督が改めて好きになった。
自分の父親も少なからず、私が嫁に行ったあと、こんな感じで寂しい思いをしていたのだろうか?と、亡き父に聞いてみたいような気持ちになった。