浮草

小津安次郎監督映画としては少し変わった題材で、旅芸人の話。大好きな京マチ子が親方中村鴈治郎の恋人兼一座の看板女優の役で出演。若手の女優に若尾文子。親方の昔の女が杉村春子で二人の間に出来た息子が川口浩と豪華な出演者。子役に「おはよう」
で次男の役をやっていた少年が出ていてこれも嬉しかった。今回見るのは三度目くらいになるが、旅芸人の一座の雰囲気とか
浮草家業の儚さや面白さ、旅芸人の気質なんかが何回か見るうちにどんどん「あぁ、そうだろうなー」とよく分かって非常に面白かった。好きなシーンは京マチ子が杉村春子の家に乗り込んできて、毒を吐く。そのあと軒下で向かい合わせになって鴈治郎と
京マチ子が罵り合ってけんかするシーン。おいおい、そこまで言うか？ということまで言い合うのだが、人間臭くてすごく好きだ。京マチ子がちょっとはすっぱなんだけどいいオンナを演じるときのたばこの吸い方やいじわるの言い方、身のこなし、悪い女なんだろうけど粋でかっこいい。杉村春子の落ち着いた演技も非常に印象に残る。この人もすごく粋だ。黒木瞳のような女優も良いとは思うが、杉村春子みたいな女優にはとうていなれないタイプだろうなー、と思う。二号さんの役は、今回憂いがあって、しかもしゃんとしていてかっこよかった！