fiorentinax's ブログ

自宅で作った料理や、見た映画の感想、旅行の思い出を記録に残そうと始めたブログ

昭和元禄落語心中 アニメ

昭和元禄落語心中 コミックセット (KCx ITAN) [マーケットプレイスセット]

数年前、アニメを深夜の番組で見たことからこの作品にはまってしまった。
その後漫画を読み、現在実写化ドラマがNHKで放送されていてまたこれにもはまっている。

この作品が好きな一番の理由は格となる登場人物、菊比古、助六、美代吉の三人のキャラクターが何か人間臭くて美しくて大好きになってしまったから。二番目に扱っている題材が自分が興味のある落語だから。落語のシーンはすごく面白かった。三番目に作品の時代背景になんとなく郷愁みたいなものを感じるところと、作品の根底がまったく明るいものでなく暗い感じがするところ。あと主題歌を初めとする音楽もすごくいいと思った。明らかに子供が見るようなアニメではなく、深夜枠の大人向けのアニメだ、ワクワクする。色のイメージとしては京都の喫茶ソワレに使われている照明の青がかった薄紫と、赤もうせんの赤でやっぱり悲しさと美しさが混ざっている感じ。

作品は二部に分かれている。一部は全編面白いし好きだが中でも特に好きなのは、菊比呂と助六二ツ目から真打ちに上がる前のあたりで、二人がたたみの狭い部屋に一緒に暮らしているころ。まったくタイプの違う二人が肩を寄せ合って夢に向かっている感じが素晴らしい。この頃美代吉と菊比呂が付き合い始めるのだが、この二人の関係はなにか悲しくて、わざとらしくなく、色気があってうっとりする。芸者の美代吉、彼女がすごくオンナを出してくるのだが、その出し方も台詞も好きだ。こういう女はモテて男に不自由なんかしないように見えて実は人生は儚く、薄幸だったりする。安定と逆、不安定だからこそ魅力的だ。

タイトルにもなっているが、心中場面は圧巻というか息をのむ作りにうまく出来ている。主題歌のバックの映像も心中場面を見て、あぁなるほどと分かる作りになっていてしゃれている。


助六と美代吉の死後、二人の子供の小夏を八代目八雲となった菊比呂が育てながら、落語のあり方や二人を失った苦悩を背負って生きている。八雲の姿とその弟子、もとやくざの与太郎と小夏の生き様が第二部。
胸が締め付けられるような緊張感は一部ほどないが、のちに助六を名乗るようになる与太郎のキャラクターが単純でまっすぐで、小夏と八雲とはまた違った情熱で、落語に対して真摯に向かっていく様が見ていて気持ちが良い。過去を背負った八雲と小夏とは対極の与太郎が、この暗い作品の光みたいなものだと思う。愛すべき人物だ。
好きな話しは、小夏を妊娠させた男、与太郎が昔入っていたやくざの組の親分のところに啖呵をきりにいく話。まくし立てるシーンは与太郎役の声優も大変だっただろうなー。とても迫力のあるシーンだった。小夏もこの与太郎の姿を見て彼と一緒になって、子供をそだてようと思ったのだろう。そしてまた相手の親分もかっこよかった。登場シーンは少ないが大物感がこれみよがしではなくうまい感じにでていて印象に残るキャラクターだ。

八雲氏の運転手兼雑用係の松田、かつては美代吉の芸者仲間で料亭の女将のお栄、この脇役たちも粋だ。
主役である菊比呂が自分の好きな男性のタイプのど真ん中に来るような人だったことと、登場人物みんなが非常に粋なところ。
この二点もここまでこの作品を好きになった理由だと思う。粋な人は関西では少ないからよけいに憧れがある。

美代吉の声が自分のイメージにぴったりだったのも嬉しかった。